それは、知らなければ良かったと思う、面影。

 

 

 

 

 














「隊長、何をやってるんですか。」
 そう言うと、コンピューターに向かっていた二つ年上の隊長は驚いたように振り向いて、それから自嘲気味に笑った。


「出来ない事、だよ。」


 どういう、意味なんだろうか。
 よく分からなくて聞き返すシンに、けれどアスランは答えてくれない。


「こんな風だから、振られるんだろうな。」
「え?」
「いや、なんでもない。ちょっと自分の力不足が、恨めしかっただけだ。」


 その言葉が、シンは信じられなかった。
 悔しいけれどこの人は自分よりもずっと優秀で、射撃だってモビルスーツ戦闘だって。それから指揮だって完璧だ。
 確かに女性の趣味はあんな婚約者が居るくらいだから分からないかもしれないけれど。
 悔やむ事なんて、無いと思うのに。
 大きなため息は、一体どういう意味があるんだろう。


「シン。」


  一度名前を呼ばれた。
「何があっても、俺はお前を攻めないし、否定しない。だから、辛い時は話していいぞ。」
 一人で悩むのは、辛すぎるから。
 と、この人の目は一体何処を見ているというのだろうか。
 その時のシンには、分からなかった。
 彼が言いたい事も、何を考えているのかも何一つ。
 そして知る時、シンは知る。
 彼の、本当の苦悩を。


















戦場に降りた一条の光は、初めて見る機体だった。
といってもアカデミーの教科書や軍のデータベースでは何度かこっそり見せて貰った物


ZGMF ミX10A フリーダム



隊長と一緒に、ヤキン・ドゥーエを生き抜いたという伝説の機体だった。
その強さは、確かに規格外で、シンは戦闘中だと言うことを忘れて思わず見惚れてしまった。
アスランの技術を見た時にはこれが伝説なのだと感じたけれど、彼はもっと凄い。
10機を優に超えている地球軍のモビルスーツの攻撃を、全て紙一重で交わしながら、想像も付かないような方向に動いて相手を行動不能にしていく。
それなのに、一気たりとも破壊された機体はなかった。
斬りかかってくるサーベルは身を横に避け手を落として腹に機体の膝を入れる。そして計器の付いている頭部だけをつぶしてしまうのだ。
まさに神業。
これが、天才という奴なのだろうか。
ふと横を見るとセイバーはどういう訳か地球連邦の雑魚ばかりを相手にしていた。確かに、1機2機と落としていくけれど、いつもの生彩はなかった。
訝って、オープンにするライン。
けれど、コンタクトを取ろうとした瞬間。


『キラ、力を貸してくれ。』


聞こえてきたのはそんな声で、

『僕は・・・ザフ・を信じ・・・れない。』


全周波で拾っているのだろう、セイバーのスピーカー越しに聞こえる、切れ切れの言葉。


『じゃあ、俺たちと戦うって言うのか。』


キラという人の答えは『』という単純な物だった、でも引かない。
どうなるのか、シンは見守ろうとした。けれどそこに


「くそ。」


やっと真打ちのお出ましだ。
盗まれた三機の家の一機、ガイアの爪がインパルスに襲いかかる。
に形態をとれるガイアは素早い、空中戦こそ得意ではないけれど少しでも陸に近づけば一機に裂かれる。
その的を、捨て置く事は出来なかった。
以前の海辺の戦闘と同じように、シンはガイアに一騎打ちを挑む。
MAけたの素早さに腕をかすめられて、でも代わりに足に一発当てる。
弾かれた。
ザフト製の走行は流石に協力だ、でも。
上げる水しぶき


「貰った。」



視界を奪った上で向かってくる敵をレッグフライヤーを切り離して囮にして避ける。
機動性は落ちるけれどミネルバからなこの距離、補給はすぐに受けられるし。
ガイアの低い視界が見誤る、的。

「ビンゴ。」

仕留められたと、思ったのに。

「え?」


インパルスの腕を打ち抜く一条の光。見ればそこにはフリーダムがいて、でもライフルは構えていない?
疑問に思いながらもし損じた所為で受けそうになる反撃。

助けてくれたのは、セイバーだった。

大地に実弾を撃ち込んで、煙幕を作ると、そこから一機にガイアにつっこむ。
足を、狙ったようだった、代わりに腕を持って行かれそうになる、けれどどこからか飛んできた光がそれを助けて。
セイバーの両手がインパルスを掴む、そしてスラスターを全開にするとミネルバの方へ。


「ちょ、待て、あんた何考えて。」



反論するけれど、パワーもレッグフライヤーもないインパルスではセイバーに叶わない。
去りゆく視界の中でガイアが手足を打ち抜かれ行動不能になっているのが見えた。やったのはフリーダムだ。
くそ、あいつは俺が仕留めるつもりだったのに。
こいつの所為で。
新たな敵が決まる。
隊長の知り合いなのではないかとも思ったけれど、引く気はなかった。




フリーダムを打つという、決意。




艦に、近づくと、メイリンがすぐ新しいパーツとデュートリオンビームを出してくれて。
けれど戦線に戻った時

 







そこにもうガイアやフリーダムはいなかった。






「どういうつもりだよ。」


 戦闘を終えたパイロット控え室で、シンはアスランの胸ぐらを掴んだ。
アスランは、小さく笑って。

どこか懐かしそうな目を見せる

 その顔が、一瞬泣いているように見えてシンは少しだけ言葉を失った、次の瞬間。



「上官に、いい度胸だな。」
「わ、はなせ、くそ。」



 
 立場は逆転だ、床に組み伏せられて後ろ手を取られる。
 振り向きながら怒りの目を向けると、アスランは厳しい顔をしていた。



「シン・アスカ。規律を乱す行為で独房入りを命じる。」




 周囲がざわめいた。
 けれどフェイス権限を持ち出されれば勝てる人間は似なくて。


「くそ、この横暴隊長、独裁者。」


 怒鳴っては見ても、後の祭りだ。
 それを見ながら新しいパイロットのハイネが興味深そうな目でこちらを見ていた。
 けれどその笑顔を知らないまま、シンは独房に入れられて。











暗かった、

怖かった。

そして何より悔しかった。



隊規を乱したのは、よく考えればアスランの方だったのに

 勝手に敵と連絡を取って、あのガイアへの攻撃の時だって思えばその延長線上にいたモビルスーツはセイバーだったのではないだろうか。
 疑心を持ち始めればそれはあくまで正しいような気がして。










憎しみが、募っていく。










そこに


コツリと、足音が響いた。


「シン・アスカ」



 外から聞こえてくるのは、憎い裏切り者の声。それに、答える気なんて無かったというのに。

「君の休暇を、申請してきた。」
「な、何を勝手な事を。」

 またしても勝手な行動に、思わず怒鳴り返してしまう。けれどアスランはそれには答えずに、
「あの三機のモビルスーツを奪ったパイロットの正体がいた、分かった。」
 淡々と、信じられない事実を告げる冷静な声。


「地球軍が開発した後天的強化人間、ブーステッドマンの被検体の3人だ。」
「なんで、そんな事!」
「俺の幼なじみはハッキングが得意でね、協力して貰った。」


 協力というのは、そう言うことだったのだろうか。それは、つまりどういう事なんだろう、混乱する頭は何も考えられない。


「カオスのパイロットはスティング・オークレイ。アビスがアウル・ニーダという少年。」


  そこまで聞いて、嫌な予感がした、効きたくない、そう思うのに。


「ガイアは、ステラ・ルーシェという少女だそうだ。」


「嘘だッ。」

 信じない、信じられない。ガイアとは、ずっと戦ってきた。
 けれど、初めてステラを見た時、自分は何を思った。


あの既視感、


 コーディネーターの記憶力は優秀だ。 



 思い出す、

あの服、髪、それから綺麗な目。
 

そして感触。



「嘘だ。」




否定の言葉が、今度は自信の心に、向けられる。
プラントで、会ってるだなんて。それもあの襲撃の直前に。
信じたく、無かった。






シン。君の一番大切な物はなんだ。







アスランの、声が遠くで聞こえた。


でも、聞きたくない。


「ゆっくりと、考えろ、逃げるな。後三日は、そこに隠れてていいから。」







戦いの、世界から切り離されて、


シンはそれから自らの心を彷徨う事になる。






多くを語らぬ英雄の、背中を見つめて。






To be continued

















えと、済みません、なんて言うか、完全に、もう来ちゃってます21話萌えすぎ!!!書きたい事とかお話が、滝のように洪水のように溢れてしょうがないです
もうね、思った事は全部この作品に注ぎ込んでるんですが、なんて言うか、敵同士が戦うという構図が、どうにもこうにもツボで
アス、キラの時、のこと思い出して、アスランもステラに会っちゃったわけで、気付いちゃったわけでどんな気持ちなんだろう、でもアスランは多くは語らないのですよ。何が裁量かなんて人によって違うから、ただ事実だけ教えてあげる、そんな先輩、グッジョブ!
ちなみに 一応補足しておくとアスランの冒頭は、ハッキングでアウル、ステラ、スティングというキーワードから色々調べようとしていて結局キラじゃないので出来なかった様子、心に胸ぐら捕まれた時に思い出したのはイザークの事でした、シン視点だと書き込めない裏ネタが沢山沢山。
後、これ続いてるっぽいかんじですが、どうなんだろう、本編もあるし。やりすぎても難かなぁとか。えと、読みたい人がいたらトップのフォームからでもどうぞです。