空気が重かった。
服務規程の中にあるから、既定の時間に食堂に来てプレートをとってくる。
けれど、いくら体調管理が大切だと分かっていてもとても食事なんて出来る状態ではなかった。
「ハイネ、これ、好きだって言ってたっけ。」
「ルナ。」
ルナマリアの失言をいさめたのはレイ。
「どうして、」
シンの赤い眼が、今は怒りよりも悲しみに染まる。その時、
カチャリ
音がしてスプーンが口に運ばれた。
「ザラ隊長。」
それを行うのが当然の場で、しかし不謹慎に見える行為にレイが口を挟んだ。アスランはそっと新米パイロットたちを見回して。
「そう言えば君たちは、同じ船のクルーが戦死するのは、初めてだったな。」
どこか眩しそうな視線。
「何が言いたいんですか。」
これ以上はかき回してくれるな問いたげなレイの視線に、しかしアスランは答えようとしなかった。すると、
「何、黙ってるんですか! 悪いのはあんたの友人とやらなんだろ。それともハイネは知り合ったばっかりだから、どうでもいいって言うのよ。」
大きな音を立ててシンが席を立つ。
「大体何なんだよ、あれ、あんな風に。」
と、悔しそうに言うのは勿論先の戦闘に介入してきた白い機体の事。どちらの陣営に組するのでもなく、ただお互いの戦力だけを削る丸で愉快犯のような。
悔しいのだろう。
アスランは、小さく笑って。
「俺が始めて戦友をなくしたのは、初陣でのことだったよ。ヘリオポリスの強襲作戦で、アカデミーから一緒だった友人を、無くした。次の戦いでは隊に入ってから一番良くしてくれた先輩を。」
語られるのは壮絶な過去、なんと言う戦場を彼は駆け抜けてきたのだろう。
「何が、言いたいんだよ。」
気おされそうで言い返すシン、その弱弱しい口調に。
「それから、初めて持った小隊の部下でアカデミーから一番仲の良かった奴も、死んだ。」
アスランは、ただ淡々と言葉を重ねる。
レイもルナマリアも、もう何も言えなかった。
それが、戦場を歩むということなのだとまざまざと見せ付けられる真実。そして、
「殆ど全部、あいつのせいだよ。」
信じられない、発言。
「え、だって。」
フリーダムはアスランと共にヤキンドゥーエを戦い抜いた同士のはずだ。それなのに、どうしてという問いに。
「どっちが、幸せなんだろうな。」
返ってきたのはわけの分からない問い。黙って先を促せば、
「シンと同じ戦争で街を焼かれ、大切なものを失い、生きるために軍に入らざるを得なかった奴だよ、あいつは。」
唐突に、帰ってくる始めの質問の答え。
「戦闘訓練なんて受けたこともないのに同朋と、親友と殺しあって、何の罪も無い友を失って。」
敵のあまりに悲惨な経歴に誰も口を挟める人間は、いなかった。アスランは、
「君たちはよく似ている。」
と、シンに笑いかけて、それから。
「でも、どっちが幸せなんだろうな。」
また、その言葉を言って席を立った。
「ザラ隊長。」
結局結論の出なかった話にルナマリアが呼び止めれば、
「シンは家族と家をなくして、あいつは心を亡くしたんだよ。普通に幸せになるためのね。・・それから、俺のことはアスランだ。」
ハイネがいなかった事になんてするなと振り向いて、アスランは言う。
自分の幸せよりも、争いの無い世界を。
そんなものしか望めなくなってしまった友人。
誰かを不幸にした記憶は彼を苛んで決して優しさを受け入れてはくれない。
どっちが幸せなんだろう、どっちが辛いんだろう。
家族に囲まれながらその温もりを感じる心を亡くした君と
家族を住む家を失いながら、友と共に復讐に生きる彼と。
愛しながら思いを受け入れられない君と。
愛し合いながら決して受け入れてもらえない自分。
問いはただ、アスランの内をめぐり、軍人のポーカーフェイスがただそれを隠していた。
| えと、諸事情で感想小説一日遅れです。 本当は、キラサイドを先に書く話でこれはその補足だったんですが色々と有り 出来れば今週中に書きたかったなぁと思いつつ、ちなみにキラサイドの方は珍しく女性化設定で「天使になった少女」というタイトルです。 しかし今週の種は本当凄かったです。 キラ様万歳!!!! |