優しい手

 

 


  レイという、名前をつけてくれたのはその人だった。元々は、名前なんて無くて。 
 ずっと呼ばれていたナンバー0と。
 俺が育ったのは、どこかの機関の研究施設だった。
 似たような子供が沢山いて、生まれた順につけられていた名前。
 


人がヒトを作る工場だった。


 従順な、戦闘兵器、労働力を得るための研究。ブロックワードと言われる条件付けで制御を可能にした彼らは、実験体として様々な事を行い、既に出荷用のサンプルさえ生産が始まっていて。
 
その中で、一人。
 生成法の確立での最後の成功体である俺だけは寿命も、制御コードも、入っていなくて。
 けれどそれ故に、体のいい玩具にされていた。
「やっ」
 拒絶の言葉は、意味を成さず。強引に連れ出されては悪戯では済まないようなことまで、強要された。
 そうやって暮らし続けて、そんなある日だったのだ。
彼と,出会ったのは。



 
 ボロボロにされた、みすぼらしい自分にその人は顔色一つ変えなかった。
「おい、なんでお前がここに居る、この方はレイなんかが見られる人じゃないんだぞ。」
 叱り飛ばす大嫌いな研究員の一人に怯える俺に、微笑んで、
「レイというのか、よく似合っている名前だな。」
 そういわれたとき、一はそれが皮肉だと思ったのだ、けれど。


「本当に『綺麗』だ。」


 彼は信じられないことを言った。
「え?」
「麗しいと、そういう意味なんだろう、君の名前は。」
 その顔は決して一生忘れないと思う。初めて向けられた、優しく慈しむような微笑み。
「は、い」
 そう答えたのが、嘘なのか本当すら分からなかったけれど。ぎゅっと手を握ってくれた暖かくて大きなその人の手のぬくもりに、ずっと触れたいと思っていた。だから、
「デュランダル様、そろそろ。」
 大嫌いな研究員の一人がそう言った時、悲しくて、つい、本当自分でも分からないのにどうしてか。
手が、離せなくて。
「どうしたんだい、何か私に言いたいことでもあるのかな。」
 聞いて、くれたから。


「居たく、ない、・・・あなたの、居ないところに。」


 搾り出すように、それは初めてちゃんと話した文章。
 そして、奇跡は起きたのだ。
「じゃあ、私の所に、おいで。いいかな、レイ?」
 信じられなかった、でも。
「はい。」
 嬉しくて、本当にどうしようもなくて、俺はどうしていいか分からない。デュランダルと呼ばれた人はそんな俺の手を引いてくれて。悪夢は、終わった、筈だったのに。







 任務で調べたホルマリンの匂いのする部屋に、はいって。
「は、」
「なんだ、ここは。」
 同僚の声が遠く、
「あ、ぁあ、う・・ぅ・うう。」
 目の前にある、そこに、そこに居たのは。知っている、顔だった。
 裸のまま、標本のように液体につけられて息絶える。
 ナンバー1以降の、実験体たち。
「はぁ、はぁはぁ。」


あれは、俺だ、



 そう思うと呼吸が止まらない、またあの闇のとらわれてどうしようもない無力の中で苦しいだけの生を生かされて。最後には、ごみくずのように殺されて。
 昔は、耐えられた恐怖だったのに。知ってしまったから、求める、もう。 あの温もり以外に自分を落ち着かせられるものなんて思いつかなかった。




無料配布し損ねたギルレイ、やっとアップしました。済みません。ちょっと遅れ気味でないようおかしいです、というか、後書きが思いつかない、どりーむ
済みません25見たら違う事色々判明、でも載せちゃえ、こういうギルレイ堂でしょう、私は好きです。