天の邪鬼

 

 

 

コーディネーターなんてみんな死んじゃえばいいのよ。
 少女の叫びは胸の奥底まで抉った。
 これが、憎しみという奴だ。
 その激しさにディアッカは久しぶりの恐怖感を感じていた。

 

 

 

 

 

人生なんてゲームみたいなもんだ。

 

 

 それがポリシー、どれだけうまく生きていけるか。
  自分は優秀だからどうとでもなる。
  捕虜になったって今は条約でその安全は保証されているし、うまい事挑発して内情の一つも掴んで手土産にする気でいた。

それが、

「参ったな、この俺があんな小娘一人に気圧されるなんて。」
 これだったらうちの『お姫様』の方がよっぽど可愛い。噂のコーディネーターの少年に、今までずっと守ってきただろうに。どうしてこう身勝手な事が言えるんだろうか。同じ我が侭でもイザークとは大違いだ、きっと根本的な根性がねじ曲がってるんだろうな、あの女。
 冷静になるとそんな分析をする余裕がでてくるのだがさっきは、雑草の生命力をまざまざと見せつけられた気がした。
 恐ろしいのはあの短絡的な思考回路だ。理性のない相手の行動は読めない、だからナチュラルなんて嫌いなんだ。だから自分は戦ってるというのに。
「これに懲りたら少しは口を慎むんだな。」
 怯えるしか能がない癖に弱者には強気な態度、本当に価値のない連中だ。
「別に、俺は本当の事を言ってるだけなんだがね。」
 皮肉気に言ってやるとまた凄い形相で睨まれた。でも言い返せないのは感情論でもぶつけないと勝てない事を分かってるからだろう。
 自分たちの居るのは戦場、人を殺す為の場所。
 嫌ならば避ければいい、平和な国なんていくらでもある。
「バッカじゃないの。」
 戦場にわざわざ来る奴が死んだ程度で騒ぐなんて、それともその覚悟もなく船に乗っていたと言うんだろうか、だったら馬鹿を通り越して愚者だ。
 ディアッカの言葉に、若いクルーが拳を握りしめた。しかし、
「止めとけ、コーディネーターなんて戦闘人形なんだ、相手にするな。」
 恐らく意識もしていないだろうたそんな皮肉に、ディアッカも黙り込んだ。

 

 

それから、

また一人閉じ込められてディアッカは天井を見上げた。
 

何もない、誰も居ない。
 

一人きりの静かな空間。

 

かった、と思う。

 

ここに捕らわれたのが自分で、

 

 全通信が途絶してイザークは少しは悲しんでくれただろうか。
 そんな事を考えてからディアッカは少し笑う、あいつがそんな事するもんか。きっと怒ってる、ニコルの時みたいに。
  本当は泣きたい癖に、怒って憎んで。
 いつだって前を向いていられる強さが馬鹿らしいのに眩しかった。

 

 あれはいつの事だっただろう、同じ隊になってまだそんなに経っていなかった頃。
「あいつのそう言うところが嫌いなんだ。」
 そう言ってた時だから、戦闘シミュレーションで対戦していてアスランに負けた時だ。
イザークは悪しきままにアスランの事を罵った、そのあからさまな言動にさすがのディアッカも面白がるどころか厄介だと思っていたというのに。

一瞬だけ見せた表情と、

「だいたい生意気なんだよ、年下の癖に。」

その一言に気が付いてしまったのだ、イザークが本当は何に怒っているのか。

 ふがいない自分を責めてみせるにはプライドが高すぎて天の邪鬼に周りばかり責めている。
 だから誤解されていると分かっているのに。
 それでも生き方を変えられない、不器用さが溜まらなく愛しく思えた。
 だから気が付かれたくなくてわざとからかうような事を言ってみたり。他に女を作ってみたり。

 そう言えば、イザークが戦死していたら自分はどうしただろう。
 あの少女のように相手を憎んだんだろうか。

 

 そんな事を考えて、すぐに否定した。
 自分なら、絶対にあんな無様な事はしない。
 それは覚悟を決めて戦争に出たイザークを、侮辱する事だから。
 自分はきっとあんな風に感情的になる事なんて無い。
 そうしなくても居られる強さがあるから。

 


 不意に、胸が痛くなった。
  この船にはあいつが居ない。
 居るのは身勝手でコーディネーターに頼らなくては自分の身すら守れないナチュラルだけ。才能を理由に努力すら放棄して。
 さっきの少女の言葉はそう考えれば象徴的だった。
無思慮で、胸くそ悪い。
 人が死ぬのが当たり前だって事すら分からないからあんな事が言えるんだ。
 そんな事を言う前に、勝つ為の努力でもしてみせればいいのに。それをしないで誰かを利用する事ばかり考えるナチュラル達。
 威張り散らす弱者程見ていて気分の悪いものはない。
 そんな風にディアッカは正直すぎる周りの奴らを嘲笑う。


 

そんなふうに、

精神的には明らかに優位に立っているというのに

この船の中一人で、

無性にイザークに会いたくなった。

会ってあの強気な態度で、もう一度勇気を与えて欲しかった。

 

 

 

 

 

何だか捕虜になってるディアッカを見てたら、この人飄々としてるけど本当は何考えてるんだろうって思っちゃって。突き詰めていったらこんな感じに。
訳分からない話ですけど言いたいのは、イザークの事を天の邪鬼という割にディアッカも十分そうだなぁって。正反対のようで居て意外と似てる二人です。ディアッカも不器用な人、見下す事で居場所を作って、だから触れ合う事が苦手なんじゃないかなって思ってみたり。

本当訳分からないですね、済みません。