「本当に宜しいのですか?」
「構わん。」
あの夏の日、自分は言いきった。
だから後悔などしていない。
あってはならないと信じ続けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PATERNAL

 

 

 

 

 

「お父様、カガリ、遊園地行きたい。」
 目に入れても痛くない、大切な一人娘は最近よくそんな事を言う。しかし、
「お父様は忙しいからね、そう言う事はお母様に言いなさい。」
 オーブを守る為、自分にはたった一日の休みも取れないと言うのが現状で口に出来るのはそんな言葉だけ。
「やだ、お父様も一緒に。みんなで行きたいの。」
 ぷぅっと頬を膨らませて珍しくだだをこねるカガリ、普段はわがままは言っても諭せば聞き分ける子なのに。
 この子が望む事なら叶えてやりたい。それでも、

「すまないな。」

 この子達の平和な未来を守ってやりたいから、ウズミはそう言うことしかできない。そして、
「お時間です。」
 秘書の言葉にウズミは仕事に戻った。
 オーブは中立の国、ナチュラルとコーディネーターが手を携え会う事の出来る。
 ウズミの授かった子どもは、その象徴となるはずだった。

 

ナチュラルのカガリと、

 

コーディネーターのキラ。

 

 しかし、状況は考えていた程甘くはなく・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小鳥の声に、ウズミは自分が見ていた物が過去の夢である時が付いた。
 

どうして今更。
 

 そう思う位昔の思い出だ。
「そう言えば結局、連れて行ってやれなかったな。」
 忙しさにかまけて、カガリとの時間は決して多くは取れなかった。それでも短い時間の中で精一杯思いを伝えてきたのだが、

「思い通りには行かないものだな。」

 身を起こして引き出しの奥にある写真語りかける、二人の子どもを抱いて微笑んでいるのは今は亡き最愛の妻だった。
  華やかな場所に出るたびに『私はあなたの奥さんになりたかっただけなのに』と美しく着飾ったドレスをつまみ上げて嫌がっていた。
 カガリのあのお転婆ぶりは彼女譲りに違いない、そう思うと受け継がれていく血に愛おしさすら込み上げてくる。
 大切な娘は、今は地球軍と共に居るのだと聞いた。大勢も見ずにレジスタンスに走り、今度は地球軍、本当に誰に似たのやら。

 着替えをすませて執務室に行き、いつもの仕事をこなす。
  しかしその日は思いもよらない出来事が彼を待ち受けていた。

「ウズミ様。大変です、我が国近海で戦闘が。」

 そんな知らせが届いたのは会議の最中で、
「何処の船籍だ。」
 ウズミは即座に聞き返す。
「ザフトと、地球軍になります。」
 嫌な予感がした。
「すぐにでも軍をだし警告しろ。」
 それでも指示だけは出して、対応に当たる。そして、
「あの馬鹿娘が。」
 報告に寄れば地球軍の船にはカガリが乗っているという。一人の父親としては助けたくない訳がなかった、しかし自分は施政者。
「どのような事情にしろ、軍艦を入港させる訳には行かない。」
 下すべき決定には一貫性を持たせなければならない。その時、

「代表、お願いがあります。」

 そう、切り出したのはMSの開発を一任しているエリカ・シモンズ博士だ。発言を許可すると、彼女はアストレイの開発難航問題についてを簡潔に述べる。
「ですから、一刻も早い完成の為にはあの機体のデータと、その船に乗っているというコーディネーターの協力が必要不可欠なのです。」
 情報によると一瞬にして最大の問題点であったOSを作り上げてしまったという驚異のコーディネーター。
「分かった。許可する。」
 冷静な判断として、戦争が始まってこれだけ立つのにMSが動かせないと言うのでは自国すらも守れない。
 

 しかしウズミは、その後渡された名簿を見て愕然とする。

 

キラ・ヤマト少尉。

 

 その名前は、かつて手放した息子と同じだった。

 

 

 

 実際に会ったその少年は、妻の面影を色濃く残していた。カガリと並ぶと驚く程によく似ている。
 その恐ろしいまでの戦闘データを見ていたから、もっと自分に似た屈強なタイプかと思っていた。
 

 

大人しそうで線の細い子ども。

 

 コーディネーターであると言うだけで、あんな子どもまで戦わなければならないのだ。
 それを避ける為にヤマト夫妻に預けたというのに。
 親とすら話したくないと言うのはきっと苦しんでいるからだ、この現状に。彼がコーディネーターなのは自身ではなく親の責任。それを責めてしまわない為に避けているのだろう。

 

なんという優しい、けれど脆弱な存在なのだろう。

 

 彼と話がしたかった、強さとは自分が持つ力の意味とは何なのかを諭したかった。
 けれど親である事を止めてしまった自分にはその権利がない。
 ただ見守り送り出して、

 

 

 

 

後悔などしていない。
彼の戦死の報を聞いた時にだって、
一度だけでいいから話しておきたかったなどと望んではいない。
自分は責任ある立場なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 そして再会して驚いた。
 何があったのか知らないけれどその瞳は、何処までも強かったから。
 その中に自らと同じ輝きを見いだした時、

 

ウズミは始めて後悔した。

 

 この少年と、もっと語りたかった。共に理想を掲げてこの国の未来を作っていきたかった。
 しかしそれはもう叶わない。
 再三の要請に返答すら返さない地球軍。
 その圧倒的な物量の前にこの国はあまりに儚い。
「お父様。」
 仮眠を取っていると、娘が珍しく不安な顔を見せていた。
「カガリ、上に立つ者が浮つくでないと言ったはずだぞ。」
 しかし、口を開けば出てくるのはそんな言葉。最後まで、優しい父には慣れなかったようだ。
「お父様、キラと同じ事を言うんだな。」
 カガリは笑顔で、指摘する。
「そうか。」
 本当にキラは自分と似ているらしい、何もしてやれなかったというのに。
 誇らしい大切な息子。
「でも私は、お父様が大好きだ。厳しいけど、尊敬出来る。」
 何よりの褒め言葉あった、しかし、
「遊園地にも連れて行ってやれない父を、か。」
 不意に思いついて聞くと、
「覚えて、たんだ。」
 どうやらカガリも覚えていたらしい。
「マーサだっていただろうに、どうしてお前はあんなに拘っていたんだ。」
 今だから、大人になったカガリにだから聞ける言葉。カガリは俯いて、それから口を開いた。
「夢を見たんだ、お母様の。・・・夢の中でお母様言ってた『一度でいいから家族全員で遊園地に行ってみたい』って。」
 妻は、そんな事自分には一度だって言わなかった。
 言えるはずがない、彼女から息子を取り上げたのは他ならない自分なのだから。
 その事実にウズミは決意する。
 自分はやはり間違っていたのだ。
 家族が別れて暮らすなど、
 兄妹を引き離すなど。
 遅くはないはずだ、まだ。
 

 

 

 

 

 翌日、オーブ最後の日。
 ウズミは真実を話した。自分の傍にいてくれたたった一人きりの娘に。
「そなたの父で、幸せであったよ。」
 その言葉を伝えられたのだから、
 やはり自分の人生に後悔などなかったのだと。
 ウズミは未来を思いながら炎をその身に受けた

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う訳でウズミ様追悼小説です。
と言っても何より悔しいのがあのお方の素晴らしさを全然表現出来てない自分自身。
あんなにも強く悲しく生きた人を見つめてみたかったんです、自らの息子を前に、何を思っていたのか。
因みに思いっきり情報の内野津南でキラとカガリの母親については完全にオリジナル設定に。多分なくなってるん、ですよね。